西東京市をはじめ全国の皆さまから数多くの作品(応募総数117作品)が寄せられました。
その作品を漫画家クロマツテツロウ 氏、切絵作家小出 蒐 氏、ジェイコム東京 西東京局 中山 純也 局長による選考委員会にて厳正な審査を行い、入賞4名、入選30名を選出いたしました。
「田無神社絵馬の奉製」
入賞者4名の作品を令和5年(2023年)田無神社絵馬デザインとして採用し、お正月の前後に絵馬として奉製(4体合計4800体)いたします。
10月3日(月)13時から10月7日(金)16時までの間、アスタ2階「センターコート」にて田無神社絵馬デザインコンテスト入賞作品ならびに入選作品の展示会を開催いたします。
※田無ASTA(アスタ)へのアクセスはこちらをご確認ください。
漫画家
クロマツテツロウ 氏
奈良県出身。東京を拠点に漫画家として活動。
現在は「グランドジャンプ」(集英社)にて『ドラフトキング』『山本昌はまだ野球を知らない』、 「ゲッサン」(小学館)にて『ベー革』を連載中。
他作品には、 『野球部に花束を』、 『ヤキュガミ』、書籍『野球部あるある』などがある。
今年の応募は117作品、6回目のデザインコンテストだ。1回目から徐々にデザインのバリエーションが増えてきた。手書きなのにデジタルっぽい作品もあり、挑戦している方も複数いた。抽象画的なものもあり、作品の自由度が拡がっていて嬉しい。特に今年は世相を反映した作品が多くあった。楽しく観させてもらった。
大賞
今年の作品は、男女、友人、家族だろうか、総じて寄り添う構図のものが多かった。世相を表しているのだろうか。戦争やコロナ禍の影響が強いものと推測するが、その中でも大賞作品は優しいタッチで、優しい色遣い、影の入れ方にも優しさが感じられる。周囲の模様に温かみがある。背景に太陽をちりばめているのかと感じた。良い絵だ。個人的に、この絵馬はほしい。ウサギはモフモフ感やふわっとした毛並みの柔らかさが難しいのに、この絵ではとてもうまく書かれている。ウサギのぽっちゃりした、ふくよかなところが可愛くて良い。
金賞(クロマツテツロウ賞)
絵は多種多様であっていいものだと思う。今回の応募作品には抽象画のような作品も含まれていたことも面白いと思っている。この作品は、基本に忠実に描かれている。しっかり絵の技術を身に着けた人の作品である。素晴らしい。皆が力を合わせて田植えをしているが、皆が力を合わせるというところに世相を反映している。太陽を水面に反射する光で表現している手法は好きだ。風景と合っている。人参がいるのかという気もするが、オレンジ色の配色もバランスよくきれいだ。自然物が円になっていて、空を大きく見せているのも好きだ。遠近感を出そうとしている。マンガに例えると農業マンガの第1話目の見開きのタイトルページのようなシーンであり、鳥獣戯画的なインパクトがある。マンガは製図的な背景を描くこともあるが、意外とシーンによっては背景の遠近法を無視して見せたいところを見せることがある。この作品はウサギが皆で力を合わせて田植えしているところをみせようとしている点がマンガ的である。手前の植物も丁寧に描かれている。遠近感がよくでていて、ぼけ方も味があって良い。これを絵馬にしたらどうなるか楽しみだ。
J:COM賞
2年連続での受賞とのことだが、自由にいろいろな色を好きに使っているがまとまっていて色彩感覚が優れていることが窺える。他にもうまいなと思った作品もあったが、手に取っていたのがこの作品だ。うまいとか、下手とかを飛び越えたセンスを感じる。散りばめられた花や王冠などウイットにとんだものがあり、作品としてまとまって成立している良い作品だ。
来年のコンテスト(辰年)へのアドバイス
おそらく私は龍を描いたことがない。ドラゴンボールの神龍が思い浮かぶ。自分で書くなら神龍を参考にするかな。墨絵のような中国っぽい絵が増えることが予想されるが、どんなバリエーションが出てくるか楽しみだ、自分でもトライしてみたい。
切り絵作家
小出 蒐 氏
西東京在住の切り絵作家。
妖艶さを帯びた凛とした女性像の切り絵を得意とする。著書〜作品集 琥珀艶の光と影、平家物語絵巻の制作中 等 朝日新聞のカレンダー(西東京市内の名所旧跡など)日本で初の切り絵によるアニメ制作〜放映(日本の昔ばなし)個展/ニューヨーク日本ギャラリー、東京芸術劇場など多数。
6回目のコンテスト。応募件数は大幅増加とは言えないが、田無神社絵馬デザインコンテストが確実に浸透してきている。これまでも、新しい手法へのトライを呼び掛けてきた。技巧的には初めは切り絵の作品もあり、今回はレースの刺繍でウサギを描いた人もいたが、全体的には作風は落ち着いている。もっと新しい技法・表現がほしい。年齢的にも高齢化しているようなので、20代、30代の方の新しい風に期待したい。
大賞
ウサギは形が簡単なようで、特長がなく、単調すぎて描くには難しいものであるが、この作品はウサギの持つ優しさや暖かさが現れている。単調なだけに非常に中味の濃い感じの絵馬になると思う。二羽のウサギが抱き合っている構図は、今の世界状況を反映していて、このような世界になるといいな、という願いが込められているように感じた。諍いが絶えないが、人間の本性は「和を以て貴しとなす」そういったものにあることが絵馬から伝わるとよい。
金賞(小出 蒐賞)
従来なかった斬新な構図だ。私がこの絵を選ぶのかと言われそうだ。画像配信やSNSが進んでいる新しい時代の潮流の中で絵馬をどう描くのか課題になっている。その中で作者が絵馬の新しい構図を投げかけてきたのを受け止めてやりたいと思った。絵馬にしたときにこれくらいコントラストがあれば非常に冴える。私が作る切り絵作品は動きを重視しており、静止していない作品が多い。この作品も動きのある作品で、スピード感がある。また、女性らしさも表現されている。くどい感じがしない。
J:COM賞
ハイテンションでコンパクトでインパクトがある。うまい作品。子どもらしい驚きと発見を素直に出している。雲や花をそろえている。とにかくインパクトのある素直な作品である。
来年のコンテスト(辰年)へのアドバイス
私は龍を描くのは得意だ。龍を描くことは難しそうに感じられるが、意外とそうでもない。どのような動きにするか、構図を考える際に、物語風のようなところから発想をスタートするのがよいのではないか。新しい龍にトライをしてほしい。描くのに難しい箇所は龍の顔でしょう。ただし誰も龍を観たことがないからこうでなければならない、ということもない。翼が生え火を噴く西洋のドラゴンではなくするにはどうしたらいいかを、じっくり考えて日本の龍に収まってほしい。ドラゴンや恐竜ではないもの、その境目にどう応えられるかが書く人のポイント。選ぶ側も意識する。田無神社の御祭神は「龍」だ。十二支で一番期待される干支である。楽しみだ。
ジェイコム東京 西東京局
中山 純也 局長
J:COM賞 プロの先生方と同じ作品を選ぶことができて自信がついた。この作品はすぐに目に入ってきた。ウサギは繊細で弱々しいイメージだが、このウサギには元気があり、ウサギの元気さと子どもの元気さとがかぶっている。太陽が真っ赤でその中の白いウサギは、元気で素直な子どもらしい絵だ。
全国から集まった多くの応募作品のなかから
選ばれた力作をご覧ください。